ケーブルの充電電流
ケーブルの充電電流
ケーブルは静電容量が大きいことから、充電電流が大きいという特徴があります。
電験2種ではそこに焦点をあてて、充電電流を求める問題がこれまでに出題されています。(H12,H14,H25)
覚えることは少なくそれほど難しい単元ではないのでスーッと攻略していきましょう。
3心ケーブルには下図のように
・線と線の間の相互静電容量{C}_{m}[F]
・線と大地間の対地静電容量{C}_{s}[F]
の2種類の静電容量が存在しています。この図をΔ-Y変換すると、下図のようになります。
静電容量なので、Δ→Yで3倍になることに注意。
1心あたりの中性点に対する静電容量(作用静電容量とよびます){C}[F]は
となります。また、このケーブルに周波数がf[Hz]の三相平衡電圧V[V](線間電圧)をくわえると、
ケーブル1心あたりに流れる充電電流{I}_{C}[A]は
\dot { { I }_{ C } } =j2{\pi}fC×\frac { V }{ \sqrt { 3 } } \quad [A]
となります。この式を式変形してスカラー量で表すと、
{ I }_{ C }=2πf\left( { C }_{ s }+3{ C }_{ m } \right) ×\frac { V }{ \sqrt { 3 } } \quad [A]
このようになります。
また、三相充電容量Q[V・A]は
となります。どの式も3種レベルなので理解はできるはず・・・!
さて、電験2種のこれまでの出題のパターンですが、ケーブルを特殊な結線にしてから測定される静電容量{C}_{1}、{C}_{2}を用いて、{C}_{s}、{C}_{m}を表して解くような問題がよく出題されています。
結線は特殊ですが、特殊な計算はないので安心してください。
練習問題
【問題】
三心ケーブルを図1のように結線し、端子a-b間の静電容量を測定したところ{C}_{1}[F]であった。
次に、図2のように結線を変更し、端子a-b間の静電容量を測定したところ{C}_{2}[F]となった。このケーブルについて次の問に答えよ。
ただし、各導体間の静電容量は等しく、各導体と大地間の静電容量はそれぞれ等しいものとする。
(1) 各導体間相互間の静電容量{C}_{m}[F]及び各導体と大地間の静電容量{C}_{s}[F]を求めよ。
(2) このような特性をもったケーブルに電圧V[V]、周波数f[Hz]の三相平衡電圧を印加した場合のケーブルの充電電流{I}_{C}[A]を{V},{f},{C}_{1},{C}_{2}を用いて求めよ。
(電力管理H12より 改題)
【解き方】
(1) 図1に{C}_{m}と{C}_{s}を書き込むと下図のようになります。
このとき、3心とも短絡されているので、{C}_{m}は無いものとして考えられます。その結果、下図のように回路を変形していくことができます。
よって、
{ C }_{ 1 }=3{ C }_{ s }
{ C }_{ s }=\frac { 1 }{ 3 } { C }_{ 1 }\quad [F]…①
となる。
次に、図2についても{C}_{m}と{C}_{s}を書き込むと下図のようになります。
このとき下側の2心が接地されている為、下図の青丸部分が無いものとして考えられます。
その結果、下図のように回路を変形していくことができます。
よって、
{ C }_{ 2 }={ C }_{ s }+2{C}_{m}
{ C }_{ m }=\frac { { C }_{ 2 }-{ C }_{ S } }{ 2 }…②
②式に①式を代入して、
{ C }_{ m }=\frac { { C }_{ 2 }-\frac { 1 }{ 3 } { C }_{ 1 } }{ 2 }
{ C }_{ m }=\frac { { 3C }_{ 2 }-{ C }_{ 1 } }{ 6 } \quad [F]…③
となります。
(2) 作用静電容量をC[F]とすると、
C={ C }_{ s }+3{ C }_{ m }
この式に①式③式を代入して
C=\frac { 1 }{ 3 } { C }_{ 1 }+3×\frac { { 3C }_{ 2 }-{ C }_{ 1 } }{ 6 }
C=\frac { 2{ C }_{ 1 }+{ 9C }_{ 2 }-3{ C }_{ 1 } }{ 6 }
C=\frac { { 9C }_{ 2 }-{ C }_{ 1 } }{ 6 }
これを充電電流を求める式↓に代入します。
{ I }_{ C }=2πfC×\frac { V }{ \sqrt { 3 } }
となり、
{ I }_{ C }=2πf\left( \frac { { 9C }_{ 2 }-{ C }_{ 1 } }{ 6 } \right) \frac { V }{ \sqrt { 3 } } \quad [A]
以上のように求めることが出来ます。
計算式自体はそこまで難易度が高くありませんが、回路図がややこしいので迷ったら必ず簡単な回路に直すことがポイントになるかと思います。