同期機
同期機の回路図とベクトル図
同期機は回転磁界によって同期速度で回転する回転機のことです。
同機発電機の一相の等価回路は下図のようになります。
※端子電圧Vは相電圧を示している。
この回路図においては、次の式が成立します。
$$\dot { { E }_{ 0 } } =\dot { I } \left( { r }_{ a }+j{ x }_{ s } \right) +\dot { V } $$
また、1相の端子電圧Vを基準ベクトルとして、力率角をθ(遅れ)、内部相差角をδとしたときの無負荷誘導起電力\({E}_{0}\)をベクトル図で表していきます。
まず、端子電圧Vを基準ベクトルとするので右向きに線を引きます(長さ適当で)
電流は端子電圧より力率角θ分遅れているので、右下方向に線を引きます。(長さ適当で)
次に\({ E }_{ 0 }\)をもとめる為には、端子電圧Vに\({ r }_{ a }\)にかかる電圧と、\({ x }_{ s }\)にかかる電圧を足し合わせる必要があるので、Vの先から\({ r }_{ a }\)にかかる電圧を足し合わせます。
このとき、\({ r }_{ a }\)は実数なので、電流のベクトルと同相になるので、電流と平行な線になることに注意してください。
次に\({ x }_{ s }\)にかかる電圧ですが、コイルには虚数jがつくので、電流のベクトルより90°進んだ(右上向き)線を書きましょう。また、基本的に
$${ r }_{ a }{<}{ x }_{ s }$$
であるので、ここで書く線は先ほどの線より長めに書きましょう。
$$\dot { { E }_{ 0 } } =\dot { I } \left( { r }_{ a }+j{ x }_{ s } \right) +\dot { V } $$
なので、上図の赤線が無負荷誘導起電力となります。
また、端子電圧と無負荷誘導起電力の相差角δは上図の赤で示した部分になります。
以上の流れで、同期発電機のベクトル図が完成します。
ちなみに、電験2種の問題では電機子抵抗を無視する場合も多くその場合は、下図のようなベクトル図になります。
こっちのベクトル図の方が比較的よく出題されるような気がします。
同期機の出力
同期発電機の相差角δを用いた三相出力の導出をしていきます。
上図の同期発電機において、三相出力をP[W]とすると、力率角θを用いて、
$$P=3VIcos\theta \quad ・・・①$$
注意:この回路図における端子電圧Vは相電圧なので係数は3です。
となります。次に下図の赤の点線部分に着目します。
この赤の点線の大きさは
$$\begin{cases} { Ix }_{ s }cos\theta \\ { E }_{ 0 }sin\delta \end{cases}$$
の二通りの求め方ができるので、
$${ Ix }_{ s }cos\theta ={ E }_{ 0 }sin\delta $$
$$Icos\theta =\frac { { E }_{ 0 }sin\delta }{ { x }_{ s } } ・・・②$$
となり、②式を①式に代入して、
$$P=3V×\frac { { E }_{ 0 }sin\delta }{ { x }_{ s } } $$
という風に三相同期発電機の出力の式が導出することが出来ます。
何で2種類の異なる電圧かけるんだろ?っていう3種時代の疑問をここで初めて解決できる人も多いはず笑
ベクトル図を書くことで楽に出力の導出が出来ますので、ベクトル図を必ずマスターしておきましょう。また、ベクトル図の赤点線に着目して問題を解くパターンはかなり多いのでそこもポイントとなります。
無負荷誘導起電力の大きさをベクトル図から求める
先ほどと同じ回路を用いて無負荷誘導起電力\({E}_{0}\)を求めてみましょう。
解き方の基本は三平方の定理です。
まず、上図のように黄色の三角形に着目して、三平方の定理を使うのに必要な線の大きさを求めます。その後、三平方の定理を使うと、
$${ \left( V+{ Ix }_{ s }sin\theta \right) }^{ 2 }+{ \left( { Ix }_{ s }cos\theta \right) }^{ 2 }={ { E }_{ 0 } }^{ 2 }$$
$${ V }^{ 2 }+2V{ Ix }_{ s }sin\theta +{ I }^{ 2 }{ { x }_{ s } }^{ 2 }{ sin }^{ 2 }\theta +{ I }^{ 2 }{ { x }_{ s } }^{ 2 }{ cos }^{ 2 }\theta ={ { E }_{ 0 } }^{ 2 }$$
$${ V }^{ 2 }+2V{ Ix }_{ s }sin\theta +{ I }^{ 2 }{ { x }_{ s } }^{ 2 }={ { E }_{ 0 } }^{ 2 }$$
$${ E }_{ 0 }=\sqrt { { V }^{ 2 }+2V{ Ix }_{ s }sin\theta +{ I }^{ 2 }{ { x }_{ s } }^{ 2 } } $$
という風に無負荷誘導起電力の大きさを求めることができます。
今回は電機子抵抗を無視しましたが、電機子抵抗がある場合も解き方は同じです。
ちょっと計算量が多く見えますが、まず文字の状態で式を作って、最後に値を代入することで短い時間で答えを求めることができます。先に値を代入しないように注意しましょう。(先に代入した方が早く解ける問題もありますが、基本は式変形→代入です。)
短絡比
短絡比Ksは次のような定義となっています。
$$短絡比=\frac { 無負荷で定格電圧を誘導するのに必要な励磁電流 }{ 定格電流に等しい短絡電流を流すのに必要な励磁電流 } $$
3種でこの定義に苦しめられた人は多いはず。もう少しスッキリさせましょう。
$${ K }_{ s }=\frac { 無負荷で{ V }_{ n }を誘導するのに必要な{ I }_{ f2 } }{ { I }_{ n }に等しい{ I }_{ s }を流すのに必要な{ I }_{ f1 } } $$
これ以上はもうどうしようもありませんので何とか覚えてください笑
電験2種ではこれまでに何度も短絡比の定義を書かせる問題が出題されていますので絶対に覚えておく必要があります。
また、短絡比は、無負荷時の端子電圧(線間電圧)が定格電圧(線間電圧)に等しいときに、三相短絡すると定格電流の\({ K }_{ s }\)倍の電流が流れます。よって、
$${ K }_{ s }{ I }_{ n }={ I }_{ s }$$
もしくは
$${ K }_{ s }=\frac { { I }_{ s } }{ { I }_{ n } } $$
下の式の方が一般的ですが、自分のお好きな方で覚えてください。
また、短絡比は%同期インピーダンス(\({Z}_{s}\))を用いると
となります。
ところで、%同期インピーダンスって何?という疑問が出てくると思うのでここで軽く求めておきましょう。
同期インピーダンスは上図のように電機子抵抗と同期リアクタンスのベクトル和のことで・・・まぁ、簡単に言うと同期機のインピーダンスです。(そのままですが)
これを%インピーダンスに直したものが%同期インピーダンスになります。(%インピーダンスについては%Zと電圧変動率のページをご覧ください。)
よって、定格線間電圧を\({V}_{n}\)[V]、定格電流を\({I}_{n}\)[A]、定格出力を\({P}_{n}\)[W]とすると、
このようになります。%Zの解説ページとほぼ一緒ですね。これの逆数が短絡比になることを覚えておくと良いでしょう。
短絡比について覚えることって多いですよね・・・。
ということで以下にまとめておきます。
- 短絡比の定義
- 短絡電流と定格電流の関係
- 逆数が%同期インピーダンス
これだけです!簡単でしょ!