配電系統のループ電流
この単元では、配電系統のループ電流について説明していきます。平成18,29年に出題実績があり、参考書によって解き方が違っていて解きにくい問題だと個人的に思いますので僕流の解き方をまとめておこうと思います。
連系開閉器に流れる電流
下図のように、変電所の同一バンクから引き出されている負荷Aと負荷Bの系統があるとします。
このとき、下図のように連系開閉器を投入したときに連系開閉器に流れる電流を図のように\(\dot { I } \)と定義します。
このとき\({ \dot { Z } }_{ A }{ \dot { Z } }_{ B }\)に流れる電流は図のようになり、\({ \dot { Z } }_{ A }{ \dot { Z } }_{ B }\)にかかる電圧が等しくなるため、下の公式が成立します。
という風になります。これだけです。超シンプル!
というわけで、これを使った問題を解いてみましょう。
練習問題
【問題】
図のように変電所の同一バンクから引き出されていて、それぞれの系統末端において開放状態の連系開閉器によりオープンループで連系されているA配電系統とB配電系統があり、各系統は次のように構成されている。
また、負荷は各系統の末端に集中して接続されており、各系統からは次のように電力が供給されている。
この状態で連系開閉器を投入したときの、連系点に流れるループ電流の大きさと向きを求めよ。
ただし、連系開閉器の投入後も各負荷の消費電力に変化はなく、連系点の電圧は6600[V]であるものとする。
また、CVTケーブル325\([{mm}^{2}]\)のインピーダンスは0.0579+j0.0951[Ω/km],アルミ電線240\([{mm}^{2}]\)のインピーダンスは0.124+j0.311[Ω/km]とする。
【平成18年電力管理より】
【解き方】
めちゃくちゃ面倒くさそうな問題ですが、まずは線路インピーダンスを求めます。
A配電系統、B配電系統のインピーダンスをそれぞれ\({ \dot { Z } }_{ A }[Ω]{ \dot { Z } }_{ B }[Ω]\)とすると、
$$\begin{eqnarray}{ \dot { Z } }_{ A }&=&\left( 0.0579+j0.0951 \right) ×0.5+\left( 0.124+j0.311 \right) ×1.5\\\\ { \dot { Z } }_{ A }&=&0.21495+j0.51405\end{eqnarray}$$
$$\begin{eqnarray}{ \dot { Z } }_{ B }&=&\left( 0.0579+j0.0951 \right) ×0.1+\left( 0.124+j0.311 \right) ×1.0\\\\ { \dot { Z } }_{ B }&=&0.12979+j0.32051\end{eqnarray}$$
となります。ここで、連系点に流れるループ電流を\(\dot { I } \)と定義すると下図のようになります。
単元の最初で学んだように、
$${ \dot { Z } }_{ A }\left( \dot { I } +{ \dot { I } }_{ A } \right) ={ \dot { Z } }_{ B }\left( { \dot { I } }_{ B }-\dot { I } \right) …①$$
が成立するのですが、\({ \dot { I } }_{ A }{ \dot { I } }_{ B }\)が分からないのでこれを求めていきます。
連系点の電圧をV=6600[V]とすると、負荷Aの電力についての式は
$$\sqrt { 3 } { \dot { I } }_{ A }V={ P }_{ A }-j{ Q }_{ A }$$
\(j{ Q }_{ A }\)の符号がマイナスになるのは\(\dot { I }\)の共役複素をとっているからです。
$${ \dot { I } }_{ A }=\frac { { P }_{ A }-j{ Q }_{ A } }{ \sqrt { 3 } V }…② $$
となり、同様のことをB系統でも行うと、
$${ \dot { I } }_{ B }=\frac { { P }_{ B }-j{ Q }_{ B } }{ \sqrt { 3 } V }…③$$
となります。
ここからは①式を式変形していきます。
$$\begin{eqnarray}{ \dot { Z } }_{ A }\left( \dot { I } +{ \dot { I } }_{ A } \right) &=&{ \dot { Z } }_{ B }\left( { \dot { I } }_{ B }-\dot { I } \right) \\\\ { \dot { Z } }_{ A }\dot { I } +{ \dot { Z } }_{ A }{ \dot { I } }_{ A }&=&{ \dot { Z } }_{ B }{ \dot { I } }_{ B }-{ \dot { Z } }_{ B }\dot { I } \\\\ \dot { I } \left( { \dot { Z } }_{ A }+{ \dot { Z } }_{ B } \right) &=&{ \dot { Z } }_{ B }{ \dot { I } }_{ B }-{ \dot { Z } }_{ A }{ \dot { I } }_{ A }\\\\ \dot { I } &=&\frac { { \dot { Z } }_{ B }{ \dot { I } }_{ B }-{ \dot { Z } }_{ A }{ \dot { I } }_{ A } }{ { \dot { Z } }_{ A }+{ \dot { Z } }_{ B } } \end{eqnarray}$$
ここで②③式を代入すると
$$ \dot { I } =\frac { 1 }{ \sqrt { 3 } V } ×\frac { { \dot { Z } }_{ B }\left( { P }_{ B }-j{ Q }_{ B } \right) -{ \dot { Z } }_{ A }\left( { P }_{ A }-j{ Q }_{ A } \right) }{ { \dot { Z } }_{ A }+{ \dot { Z } }_{ B } }$$
となり、ここに各値を代入していきましょう。ただし、分子の-に注意!
$$\dot { I } =\frac { 1 }{ \sqrt { 3 } ×6600 } ×\frac { \left( 0.12979+j0.32051 \right) \left( 900+j436 \right) -\left( 0.21495+j0.51405 \right) \left( 1350-j654 \right) }{ 0.21495+j0.51405+0.12979+j0.32051 }$$
※有効電力と無効電力は補助単位の“k”をつけたまま代入することで答えが[kA]になることに注意しましょう。”k”の単位での代入が怖い場合は素直に[W]や[var]に直して代入するといいでしょう。
あと、計算がかなり大変ですが、“早く正確に”を心がけて計算しましょう。
$$\dot { I } =\frac { 1 }{ \sqrt { 3 } ×6600 } ×\frac { -649.30256-j208.34276 }{ 0.34474+j0.83451 } $$
このようになりますが、分子の実部も虚部も負の符号がついていることから、ループ電流の向きは最初に定義した下向きとは逆の上向き(B系統からA系統)であることが分かります。
ここからは電流の大きさを求めていきます。
$$\begin{eqnarray}\left| \dot { I } \right| &=&\frac { 1 }{ \sqrt { 3 } ×6600 } ×\frac { \sqrt { { 649.30256 }^{ 2 }+{ 208.34276 }^{ 2 } } }{ \sqrt { { 0.34474 }^{ 2 }+{ 0.83451 }^{ 2 } } } \\\\ \left| \dot { I } \right| &=&\frac { 1 }{ \sqrt { 3 } ×6600 } ×\frac { 681.93140 }{ 0.90291 } \\\\ \left| \dot { I } \right| &=&0.066068[kA]\\\\ \left| \dot { I } \right| &≒&66.1[A]\end{eqnarray}$$
というわけでループ電流はB系統からA系統に向かう方向で大きさは66.1[A]ということが分かりました。
理解は簡単ですが、計算が難しかったですね。1問あたり30分の時間があるので25分あたりで解けるくらいを目標に電卓の腕を磨いたり速筆スキルを高めるといいかと思います。
こういう技術を磨いていると、電験って一体何の試験なの?電卓?速筆?っていう風に訳分からなくなってくるので細かいことは気にしないでおきましょう笑
以上になります!お疲れ様でした!