等増分燃料費法

2021年9月8日

SATの電験2種講座

この単元では、複数の発電機を経済的に運用する為には、負荷をどのように分担すればいいのだろうか?といったことを解説していきます。複雑な計算は何もなく微分の知識だけで解ける単元なので難易度はVery easy!!ですが、

最近の出題事例は平成17年くらいであまり出題されにくい単元です(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)

燃料費と発電機出力の関係

例えば、下図のような火力発電機があったとしましょう。

外気温などの様々な条件を無視すると、火力発電機の出力Pを一定に定めたとき、必要な燃料費Fは一定に定まります。よって、燃料費Fは出力Pの関数であると言えます。

燃料費Fの関数は

P=10W のとき F=20円
P=20W のとき F=40円
P=30W のとき F=60円

のような比例のような関数ではなくて

P=10W のとき F=18円…①
P=20W のとき F=29円…②
P=30W のとき F=40円…③

のように少し複雑な関数になっています

こういう感じで燃料費と出力には関係性があるということが分かってもらえたかと思います。

①~③の3つの式は③式のパターンがコストパフォーマンス(コスパ)が良いことは何となく分かると思います。(1円あたりの出力を求めることで)

では、ここからは特性の異なる複数の発電機にどのように負荷分担をすれば最も経済的であるか考えてみましょう。

 

等増分燃料費法

上図のように2台の火力発電機で負荷\({P}_{R}\)に電力を供給している系統があったとします。

もちろん、\({ P }_{ 1 }+{ P }_{ 2 }={ P }_{ R }\)が成立します。

青枠で囲まれた式は先ほど説明した、燃料費を出力の式で表したもの発電機の燃料費特性と呼ばれています。(そのままですが笑)

さて、負荷\({P}_{R}\)を二つの発電機にどのように分担すれば経済的なのか?ということを考えていくのですが、こういったときは等増分燃料費法という考え方を使います。

point!

等増分燃料費法・・・各発電機の増分燃料費\(λ\)(ラムダ)が等しいとき、燃料費が最も経済的になるという考え方のこと。

増分燃料費\(λ\)・・・各発電機の燃料費特性を出力で微分したもの

では早速この考え方を使ってみましょう!

まずは、各発電機の燃料費特性を微分して増分燃料費を求めます。発電機1,2の増分燃料費をそれぞれ\({λ}_{1}{λ}_{2}\)とすると、

$${ λ }_{ 1 }=\frac { d{ F }_{ 1 } }{ d{ P }_{ 1 } } =900+10{ P }_{ 1 }$$

$${ λ }_{ 2 }=\frac { d{ F }_{ 2 } }{ d{ P }_{ 2 } } =600+15{ P }_{ 2 }$$

等増分燃料費法の考え方により、\({ λ }_{ 1 }={ λ }_{ 2 }\)のとき、最も経済的になるので

$$900+10{ P }_{ 1 }=600+15{ P }_{ 2 }$$

$$10{ P }_{ 1 }-15{ P }_{ 2 }=-300$$

$$2{ P }_{ 1 }-3{ P }_{ 2 }=-60$$

という風に最も経済的となる負荷分担の条件が求められました。

試しに具体的な負荷の値として、\({P}_{R}=80\)としてみると

$$\begin{cases} { P }_{ 1 }+{ P }_{ 2 }=80 \\ 2{ P }_{ 1 }-3{ P }_{ 2 }=-60 \end{cases}$$

この連立方程式を解くと各発電機の負荷分担は

$$\begin{cases} { P }_{ 1 }=36\quad [MW] \\ { P }_{ 2 }=44\quad [MW] \end{cases}$$

となります!

本当か?って気になる方もいると思うので、負荷分担と燃料費の関係を表とグラフにまとめてみました。

 

多分合ってそうですね。

さて、ここまでの流れをまとめると…

point!

①各発電機の燃料費特性を微分して増分燃料費を求める。

②各増分燃料費が等しくなるように負荷を分担する。(等増分燃料費法)

これだけです!THE★シンプル!!!!!!

という感じで解いてやってください。見た目以上に超簡単です。

以上です!お疲れ様でした。

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