1線地絡計算
この単元では、三相3線式配電線で1線地絡がおきた際の回路の計算(よくあるパターン)について説明します。
昭和時代ではかなりの頻度で出題されていたみたいですが、平成時代は平成2・20・28年、と出題頻度は低めです。コツさえ掴めたらただの回路計算なので点稼ぎ問題に見えてくるはずです。
一見難しく見えますが案外簡単なので頑張りましょう!
1線地絡電流の計算
基本的な出題パターンは下図のような回路図で地絡電流\({I}_{g}\)を求めよ。といったもの。
かなりごちゃごちゃしててなんやこれ!ってなるかもしれませんが、全然大したことありませんので身構えないでください笑
回路図で何が起こっているかというと、単相変圧器で混触が起きて、配電線から接地抵抗\({R}_{g}\)を通じて地絡電流\({I}_{g}\)が流れたってだけです。
EVTは接地型計器用変圧器のことで、地絡時に生じる零相電圧を得る為の変圧器です。
零相について知りたい方はこちらのページでチェックしてください。
さて、この種の問題では、事故点の地絡電流\({I}_{g}\)が求められればOKです。
\({I}_{g}\)は以下のような流れで求めます。
①EVTの抵抗Rを1次側に換算する
②等価回路を書く
③回路計算をする
この3手順でOKです!①だけ気を付ければあとは簡単です。
順番に説明していきます。
①EVTの抵抗を1次側に換算する
後の回路計算をする上で、EVTの抵抗Rを一次側に換算する必要があります。
EVTの変成比をn、一次側換算時の等価中性点抵抗を\({R}_{n}[Ω]\)とすると
で表されます。暗記でもOKですが、一応導出もやっておきましょう。
下図の①のようにEVT一次側に印加電圧\({ \dot { V } }_{ 0 }[V]\)がかかり、\({ \dot { I } }_{ 0 }[A]\)流れたと仮定します。
このとき、一次側等価中性点抵抗\({R}_{n}[Ω]\)は
$${ R }_{ n }=\frac { { \dot { V } }_{ 0 } }{ { \dot { I } }_{ 0 } }…①$$
となります。
②の部分で電流は3等分して\(\frac { 1 }{ 3 } { \dot { I } }_{ 0 }\)で、電圧は見ての通り\({ \dot { V } }_{ 0 }\)ですね。
③の二次側については、電流は\(n\)倍、電圧は\(\frac { 1 }{ n } \)倍することに気を付けましょう。
さて、ここで抵抗Rには\(\frac { 3{ \dot { V } }_{ 0 } }{ n } \)の電圧がかかり、\(\frac { n{ \dot { I } }_{ 0 } }{ 3 } \)の電流が流れるので、
$$R=\frac { \frac { 3{ \dot { V } }_{ 0 } }{ n } }{ \frac { n{ \dot { I } }_{ 0 } }{ 3 } } =\frac { 9{ \dot { V } }_{ 0 } }{ { n }^{ 2 }{ \dot { I } }_{ 0 } } $$
この式に①式を代入すると、
$$\begin{eqnarray}R&=&\frac { 9 }{ { n }^{ 2 } } { R }_{ n }\\\\ { R }_{ n }&=&\frac { 1 }{ 9 } { n }^{ 2 }R\end{eqnarray}$$
という感じで公式を導くことが出来ました!
②等価回路を書く
等価回路は、下図のようになります。(テブナンの定理より)
元の回路図の接地点に着目してそこを繋げるイメージで考えると分かりやすいかも。
ちなみに、今回の場合は\({ E }_{ a }=\frac { 6600 }{ \sqrt { 3 } } [V]\)となります。
実際の問題では配電線の対地静電容量を考慮する場合もあるので、その場合の等価回路は下図のようになります。
③回路計算をする
先ほど書いた等価回路のインピーダンス\(\dot { Z } \)を求めます。
$$\begin{eqnarray}\dot { Z } &=&{ R }_{ g }+\frac { 1 }{ \frac { 1 }{ { R }_{ n } } +j3ωC } \\ \\ \dot { Z } &=&{ R }_{ g }+\frac { { R }_{ n } }{ 1+j3ωC{ R }_{ n } } \\ \\ \dot { Z } &=&\frac { { { R }_{ g }+j3ωC{ R }_{ n }{ R }_{ g }+R }_{ n } }{ 1+j3ωC{ R }_{ n } } \end{eqnarray}$$
次に、地絡電流\({ \dot { I } }_{ g }\)は、
$${ \dot { I } }_{ g }=\frac { { \dot { E } }_{ a } }{ \dot { Z } } $$
で表されるので、ここに先ほどのインピーダンスを代入して、
$$\begin{eqnarray}{ \dot { I } }_{ g }&=&\frac { 1+j3ωC{ R }_{ n } }{ { { R }_{ g }+j3ωC{ R }_{ n }{ R }_{ g }+R }_{ n } } { \dot { E } }_{ a }\end{eqnarray}$$
という風になります。\({ \dot { E } }_{ a }\)を基準ベクトルとして、地絡電流の大きさを求めると、
$$\left| { \dot { I } }_{ g } \right| =\frac { \sqrt { 1+\left( 3ωC{ R }_{ n } \right) ^{ 2 } } }{ \sqrt { \left( { R }_{ g }+{ R }_{ n } \right) ^{ 2 }+{ \left( 3ωC{ R }_{ n }{ R }_{ g } \right) }^{ 2 } } } { E }_{ a }$$
このようになります。ちょっと計算が大変ですね。。。
と、まぁこんな流れで解いていけばいいかと思います。
過去問での出題回数が少ないので練習問題は省きますが(初見力を鍛えるのに使うべき問題なので)、平成20年も28年も実力を試すのにとても良い問題となっています。
是非是非解いてみてください。以上です!お疲れ様でした。