短絡計算
短絡計算
短絡計算は電験2種の中でも非常に出題率が高い単元になります。(平成10・15・17・19・21・24・28年度)
どの問題もワンパターンで解けることが多く、点数を稼ぎやすい単元なので必ずマスターしておきましょう。
基本的な解法の手順
短絡計算では、最終的に短絡地点に流れる短絡電流を求める問題が出題されます。
短絡電流は以下の手順で求めましょう。
②インピーダンスマップを作成する。
③短絡地点から見た電源側系統の合成%Zを求める。
④短絡地点の短絡容量を求める。
⑤短絡地点の短絡電流を求める。
このような流れで、短絡地点の短絡容量や短絡電流を求めていきます。
それぞれの手順で使う公式をまとめておきます。
①について
・上位系統の短絡容量を基準容量換算したときの%Zは
・変圧器や送電線の%Zを基準容量換算した%Z’は
どちらも基準容量が分子に来ているのがポイントです。前者は「×100」をしないといけないことに注意しておきましょう。
③について
合成%Zは短絡地点から電源側を見て、合成抵抗を求めるかのように解きましょう。
例えばインピーダンスマップが下図のようになっている場合、合成%Zは合成抵抗を求めるかのように計算して、
$$\%Z=\frac { \%{ Z }_{ 1 }×\left( \%{ Z }_{ 2 }+\frac { \%{ Z }_{ 3 }×\%{ Z }_{ 4 } }{ \%{ Z }_{ 3 }+\%{ Z }_{ 4 } } \right) }{ \%{ Z }_{ 1 }+\left( \%{ Z }_{ 2 }+\frac { \%{ Z }_{ 3 }×\%{ Z }_{ 4 } }{ \%{ Z }_{ 3 }+\%{ Z }_{ 4 } } \right) } $$
こうなります。数値を代入すると
$$\%Z=\frac { 12×\left( 2+\frac { 8×16 }{ 8+16 } \right) }{ 12+\left( 2+\frac { 8×16 }{ 8+16 } \right) } $$
$$\%Z=\frac { 12×\frac { 22 }{ 3 } }{ 12+\frac { 22 }{ 3 } } $$
$$\%Z=\frac { 264 }{ 58 }$$
$${\%Z}≒4.55$$
このような値が出ていたらOKです。抵抗と同じ感覚で大丈夫です!
④について
①で定めた基準容量を\({P}_{n}\)[V・A]、③で求めた合成パーセントインピーダンスを%Zとすると、短絡容量\({P}_{s}\)[V・A]は
この式で求められます。分母に%Zがきて分子が100であることに注意!基準容量にもよりますが%Zは大体100より小さいことが多く、短絡容量は基準容量より大きくなります。(そうならない場合もありますが・・・)
⑤について
④で求めた短絡容量を\({P}_{s}\)[V・A]、短絡地点の定格線間電圧を\({V}_{n}\)[V]とすると、三相短絡電流\({I}_{s}\)[A]は
問題を何問か解いていると分かると思いますが、この\(\sqrt { 3 } \)の付け忘れミスは誰でもあるあるのミスですが、本番では絶対にこのミスをしないように気を付けてください。そのためには普段から問題を解くときに意識しておくのが一番です。
ちなみに送電の基本が三相交流だから\(\sqrt { 3 } \)が付くこともしっかり意識しておいてください。問題の中には\(\sqrt { 3 } \)がつかない問題もありますので笑(H17年問4とか)
練習問題
【問題】(H24電力・管理より一部改題)
上図のように,2000[kV・A]の発電設備が連系されている配電用変電所において、新たに800[kV・A]の発電設備を連系する際の点aにおける三相短絡電流計算について、次の問に答えよ。
なお、各地点の%Zは図中に示した通りの値であり、特に断りの無い場合は10[MV・A]ベースである。
(1)基準容量を10[MV・A]としたときのインピーダンスマップを作成せよ。
(2)800[kV・A]の発電設備を連系した後における点aの三相短絡電流値\({I}_{s}\)を求めよ。
【解き方】
(1)まずは、%Zを基準容量\({P}_{n}=10\)[MV・A]換算で求めます。交流発電設備G1・G2の10[MV・A]換算の%Zをそれぞれ\({\%Z}_{G1}\)、\({\%Z}_{G2}\)とすると
$$\%{ Z }_{ G1 }=15×\frac { 10000 }{ 2000 } $$
$$\%{ Z }_{ G1 }=75[\%]$$
$$\%{ Z }_{ G2 }=15×\frac { 10000 }{ 800 } $$
$$\%{ Z }_{ G2 }=187.5 [\%]$$
ここまでをまとめると下図のような感じですね。
ここからインピーダンスマップを作成すると、
これが(1)の答えになります。
(2)まずは点aから見た電源側の合成パーセントインピーダンス\({\%Z}_{0}\)を求めましょう。
$$\frac { 1 }{ { \%Z }_{ 0 } } =\frac { 1 }{ 2.5+7.5 } +\frac { 1 }{ 75 } +\frac { 1 }{ 12+187.5 } $$
$${ \%Z }_{ 0 }=\frac { 1 }{ \frac { 1 }{ 10 } +\frac { 1 }{ 75 } +\frac { 1 }{ 199.5 } } $$
ここで電卓を使って計算すると素早く計算できます。
$${ \%Z }_{ 0 }=8.449…$$
次に短絡容量を\({P}_{s}\)[V・A]を求めます。
$${ P }_{ s }={ P }_{ n }×\frac { 100 }{ {\%Z}_{0} } \quad $$
$${ P }_{ s }=10×{ 10 }^{ 6 }×\frac { 100 }{ 8.449 } $$
$${ P }_{ s }=118.4×{ 10 }^{ 6 }[V・A]$$
最後に三相短絡電流値\({I}_{s}\)を求めます。公式は、
$${ I }_{ s }=\frac { { P }_{ s } }{ \sqrt { 3 } { V }_{ n } } [A]$$
これです。ちなみに、\({ V }_{ n }\)は短絡地点(点a)の線間電圧を使うので\({ V }_{ n }=6600[V]\)です。
$${ I }_{ s }=\frac { 118.4×{ 10 }^{ 6 } }{ \sqrt { 3 } ×6600 } \quad $$
$${ I }_{ s }=10357…[A]$$
$${ I }_{ s }≒10.4[kA]$$
このように三相短絡電流が求まります。
全体的な流れとしては最初にも言いましたが、
基準容量換算→インピーダンスマップ→合成%Z→短絡容量→短絡電流
こんな感じの5ステップをイメージしておくといいかもです。
発電設備の連系
これまでの話から何となく分かると思いますが、発電設備を連系するということは、合成%Zを低下させることに繋がります。その結果、短絡容量が増大し、短絡電流が増加することになります。
結果的に遮断機で遮断できないほどの電流が流れるといった弊害がおこります。
その対策法としては以下の3点が挙げられます。
- 定格遮断電流の大きな遮断機を使用する。
- 連系する発電機に直列に限流リアクトルを設置し%Zを増大させる。
- 発電機や変圧器の並列運転台数を制限する。
この対策法を問う問題も記述小問として比較的よく出題されているので覚えておいて損はありません。(論述対策にもなります。)