変圧器の並行運転

2021年9月8日

SATの電験2種講座

変圧器の並行運転

変圧器の並行運転・・・負荷の増加に対して変圧器の容量を増加させることを目的として行われます。また、変圧器の運転台数を制御することで効率的な運転をすることができます

負荷容量に対してどのように運転台数を決めるべきか計算で求めてみましょう。

 

変圧器の負荷分担

変圧器A・Bを並行運転した場合の各変圧器の負荷分担\({P}_{A},{P}_{B}\)は、基準容量換算した変圧器A・Bの%インピーダンスをそれぞれ\({\%Z}_{A}\),\({\%Z}_{B}\)として負荷容量を\({P}[MW]\)とすると

point!

$${ P }_{ A }=P×\frac { %{ Z }_{ B } }{ %{ Z }_{ A }+%{ Z }_{ B } } $$

$${ P }_{ B }=P×\frac { %{ Z }_{ A } }{ %{ Z }_{ A }+%{ Z }_{ B } } $$

となります。すなわち、負荷分担は

point!
基準容量に換算した%Zの逆比となります。

基準容量換算した%Zが大きいほど負荷分担は小さいってことですね。

 

【例題】

下の表のような2台の変圧器を並行運転させたとき、各変圧器にかかる負荷分担を\({P}_{A}[MW],{P}_{B}[MW]\)を求めよ。ただし、負荷容量を\({P}[MW]\)とする。

容量[MV・A] 電圧[kV] 短絡インピーダンス[%]
変圧器A 15 77/22 10(定格容量ベース)
変圧器B 30 77/22 10(定格容量ベース)

【解き方】

まずは、基準容量を定め、基準容量換算の%Zを求めます。

point!
基準容量換算するときは、容量と%Zの比例関係を使って計算します。

基準容量を30[MV・A]として換算した変圧器A・Bの%インピーダンスをそれぞれ\({\%Z}_{A}\),\({\%Z}_{B}\)とすると、

$$%{ Z }_{ A }=10×\frac { 30 }{ 15 } =20[%]$$

$$%{ Z }_{ B }=10×\frac { 30 }{ 30 } =10[%]$$

図で表すと↓のような感じですね。

よって、それぞれの変圧器の負荷分担は

$${ P }_{ A }=P×\frac { 10 }{ 20+10 } =\frac { 1 }{ 3 } P$$

$${ P }_{ B }=P×\frac { 20 }{ 20+10 } =\frac { 2 }{ 3 } P$$

という風に求めることができます。

基準容量に換算することだけ注意しておくと良いでしょう。

また、基準容量の換算は別単元の短絡計算でも頻繁に使うので覚えておきましょう。

 

変圧器の並行運転の台数制御

【例題】

下の表に示す定格を持つ2台の変圧器を有する変電所がある。この変電所の全負荷がP[MW]で力率が0.8で一定のとき、

①変圧器Aを1台運転したときの全損失\({P}_{LA}[kW]\)

②変圧器Bを1台運転したときの全損失\({P}_{LB}[kW]\)

③変圧器A・Bを並行運転したときの全損失\({P}_{LAB}[kW]\)

を求めよ。

容量

[MV・A]

電圧

[kV]

短絡インピーダンス

[%]

無負荷損

[kW]

定格負荷時の負荷損

[kW]

変圧器A 15 77/22 10(定格容量ベース) 30 144
変圧器B 30 77/22 10(定格容量ベース) 40 216

【解き方】

point!
無負荷損は変圧器の負荷率に影響せず一定で、負荷損は負荷率の2乗に比例します。

↑機械制御など他の単元でも使うので覚えておきましょう

負荷率は定格容量[MV・A]に対する負荷分担の皮相電力[MV・A]なので

$${ P }_{ LA }=30+144×{ \left( \frac { P/0.8 }{ 15 } \right) }^{ 2 }$$

$${ P }_{ LA }=30+{P}^{2}\quad [kW]$$

 

$${ P }_{ LB }=40+216×{ \left( \frac { P/0.8 }{ 30 } \right) }^{ 2 }$$

$${ P }_{ LB }=40+\frac { 3 }{ 8 } {P}^{2}\quad [kW]$$

先ほどの例題の

$${ P }_{ A }=\frac { 1 }{ 3 } P$$

$${ P }_{ B }=\frac { 2 }{ 3 } P$$

を使って

$${ P }_{ LAB }=30+144×{ \left( \frac { \frac { 1 }{ 3 } P/0.8 }{ 15 } \right) }^{ 2 }40+216×{ \left( \frac { \frac { 2 }{ 3 } P/0.8 }{ 30 } \right) }^{ 2 }$$

$${ P }_{ LAB }=30+\frac { 1 }{ 9 } { P }^{ 2 }+40+\frac { 1 }{ 6 } { P }^{ 2 }\quad [kW]$$

$${ P }_{ LAB }=70+\frac { 5 }{ 18 } { P }^{ 2 }\quad [kW]$$

 

ちなみに、これら3つの答えから横軸を負荷容量、縦軸を全損失としたグラフを作成すると下図のようになります。

※力率と変圧器容量の都合上、変圧器AはP<12,変圧器BはP<24、変圧器A+BはP<36となっています。

グラフより、

①負荷が小さいときは無負荷損が小さい変圧器Aの1台運転が高効率で、

②中程度の負荷では、変圧器Bの1台運転が高効率で、

③更に負荷が大きくなると、2台の並行運転が高効率

ということが分かりますね。

このように、負荷容量に合わせて運転する変圧器を制御することで効率的な運転が実現できるということですね。素晴らしい・・・。

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