ボード線図
ボード線図
ボード線図…伝達関数の周波数特性を表した図のことで、
X軸(対数表示)を角周波数ω[rad/s]、Y軸をゲインg[dB]として表されます。
ボード線図は以下の手順で描くことができます。
①伝達関数をG(s)を周波数伝達関数G(jω)に変える。
※このあたりはナイキスト線図で行ったsをjωに変える操作と同じです。
②複素数であるG(jω)の大きさ|G(jω)|を求める。↓みたいな感じで
③周波数伝達関数をゲインを表す公式↓に代入する。
④ωとgの関係を表すグラフを描く。
logの計算の復習
logが唐突に出てきて困惑する方もいるかと思いますので少しだけ復習しておきましょう。
$$g=\log _{ 10 }{ A } $$
上式のgはAが10の何乗にあたるかを示しています。よって、
$$\log _{ 10 }{ 1 } =0$$
$$\log _{ 10 }{ 10 } =1$$
$$\log _{ 10 }{ 100 } =2$$
$$\log _{ 10 }{ 1000 } =3$$
$$\log _{ 10 }{ 0.1 } =-1$$
$$\log _{ 10 }{ 0.01 } =-2$$
このような感じになります。
また、周波数伝達関数G(jω)が分数のとき、
$$20\log _{ 10 }{ \frac { B }{ A } } \\ =20\log _{ 10 }{ B } -20\log _{ 10 }{ A } $$
このように式変形ができます。すなわち逆数をとると符号が反転する感じです。
これくらい知っておけば十分でしょう。
ボード線図を描くときの要素
ボード線図を描く際には、次の4つの要素を知っておくことで、グラフをスムーズに描くことが出来ます。
①比例要素
比例要素は周波数伝達関数にωが無く、ゲインが一定となる要素のことです。その為、ωの変化に影響せずボード線図は真横一直線となります。
例えば、G(jω)=100なら
$$g=20\log _{ 10 }{ 100 } \\ g=20×2\\ g=40$$
こんな感じになり下図のようなグラフになります。
ωが変化してもゲインは変わりません。
G(jω)=0.1 , G(jω)=10 , G(jω)=100のときのグラフを下図に示します。
②微分要素
微分要素は周波数伝達関数がωに比例しているような場合で、ωの増加に対してゲインが増加する要素のことです。その為、ボード線図は右上がりの直線となります。
微分要素はG(jω)=ωTの形で表され
例えば、G(jω)=0.1ωなら
$$g=20\log _{ 10 }{ 0.1ω }$$
となり、ゲインは以下の表のような変化をします。
角周波数ω[rad/s] | 1 | 10 | 100 | 1000 |
ゲインg | -20 | 0 | 20 | 40 |
この表を下のグラフに示す。
G(jω)=0.1ω , G(jω)=ω , G(jω)=10ωのときのグラフを下図に示します。
③積分要素
積分要素は周波数伝達関数がωに反比例しているような場合で、ωの増加に対してゲインが減少する要素のことです。その為、ボード線図は下図のように右下がりの直線となります。
積分要素はG(jω)=1/ωTの形で表され
例えば、
$$G(jω)=\frac { 1 }{ 0.1ω } $$
なら
$$g=20\log _{ 10 }{ \frac { 1 }{ 0.1ω } }$$
となり、ゲインは以下の表のような変化をします。
角周波数ω[rad/s] | 1 | 10 | 100 | 1000 |
ゲインg | 20 | 0 | -20 | -40 |
この表を下のグラフに示す。
G(jω)=1/0.1ω , G(jω)=1/ω , G(jω)=1/10ωのときのグラフを下図に示します。
④一次遅れ要素
一次遅れ要素は周波数伝達関数が以下のような形で表され、
$$G(jω)=\frac { 1 }{ \sqrt { 1+{ ω }^{ 2 }{ T }^{ 2 } } } $$
※Tは定数
ωの増加に対してゲインが減少するような、積分要素に似た要素となっています。
しかしながら、ωTが1より小さい場合はゲインがほぼ0となることから、ボード線図は途中から右下がりに傾きが変化する軌道を描きます。
また、ωT=1の場合は
$$g=20\log _{ 10 }{ \frac { 1 }{ \sqrt { 2 } } } \\ g≒-3[dB]$$
となります。
例として、T=1としたときの一次遅れ要素を下のグラフに示します。
電験2種ではボード線図でこの曲線部分を正確に描く事は困難なので、問題文で「折れ線近似で書け」という条件がついていることがほとんどです。折れ線近似で表すと下図のようになります。
なんとなく分かりますよね!!!(うまく言葉に出来ないのでごり押し)
実は
で、その角周波数まではゲインを0とする考え方が折れ線近似の考え方です。
ちなみに
しっかりと覚えておくべき大事なポイントになります。
ちなみにT=0.1 , 1 , 10のときの正しい軌道を描くと下図のようになります。
ωがTの逆数となるタイミングで曲がってますよね。分かるでしょうか・・・?
だいぶ噛み砕いて説明したつもりですが、やっぱり難しく感じるかもしれません・・・。
なので、毎度のことながら演習問題でボード線図を書くという経験を積みましょう。
練習問題
次の伝達関数の角周波数ω[rad/s]に対するゲイン特性を図示せよ。
【問題】
$$G(s)=10(1+\frac { 1 }{ 0.1s } )$$
まずは式変形(一つの分数に)していきます。
$$G(s)=10+\frac { 10 }{ 0.1s } $$
$$G(s)=\frac { s+10 }{ 0.1s } $$
$$G(s)=\frac { 0.1s+1 }{ 0.01s } $$
$$G(jω)=\frac { j0.1ω+1 }{ j0.01ω } $$
$$|G(jω)|=\frac { \sqrt { 0.01{ ω }^{ 2 }+1 } }{ 0.01ω } $$
$$g=20\log _{ 10 }{ \frac { \sqrt { 0.01{ ω }^{ 2 }+1 } }{ 0.01ω } } $$
①の要素は0.01の部分が\({T}^{2}\)にあたるので、T=0.1となり、ω=10となるところから右上がりになります。
②の要素はT=0.01なのでω=100の地点でX軸と交わる右下がりの要素です。
この二つをグラフに表し、合成すると下図のようになります。
実際の問題では折れ線近似のグラフを書くような指示があると思いますが、その場合どうなるかは読者の皆様なら分かるはず!
答え↓
以上です!