ラプラス変換・部分分数展開
ラプラス変換
ラプラス変換…時間tで表される関数をsの関数に変換すること。
※tの世界にあるものをsの世界にもってくるイメージで使いましょう。
※なんでラプラス変換をするかというと…一言で言うと計算をしやすくする為!
f(t)で表される関数をF(s)にラプラス変換する際には、以下の公式を使います。
$$F(s)=\int _{ 0 }^{ \infty }{ f(t){ e }^{ -st }dt } $$
が、面倒なのでとりあえずは下図に示すラプラス変換表を覚えちゃいましょう。
(上の公式を使わないと解けない問題はほぼ出題されないと僕は思っています)
ラプラス変換表は電験2種に出題される分だけ表しておきます。
$$f(t)$$ | $$F(s)$$ |
$$\delta (t)$$
単位インパルス関数 |
$$1$$ |
$$u(t)$$
単位ステップ関数 |
$$\frac { 1 }{ s } $$ |
$$t$$
単位ランプ関数 |
$$\frac { 1 }{ { s }^{ 2 } } $$ |
$${ t }^{ n }$$ | $$\frac { n! }{ { s }^{ n+1 } } $$ |
$${ e }^{ -at }$$ | $$\frac { 1 }{ { s }+a } $$ |
$${ te }^{ -at }$$ | $$\frac { 1 }{ { (s+a) }^{ 2 } } $$ |
$$sin\omega t$$ | $$\frac { \omega }{ { s }^{ 2 }+{ \omega }^{ 2 } } $$ |
$$cos\omega t$$ | $$\frac { s }{ { s }^{ 2 }+{ \omega }^{ 2 } } $$ |
$${ e }^{ -at }sin\omega t$$ | $$\frac { \omega }{ { (s+a) }^{ 2 }+{ \omega }^{ 2 } } $$ |
$${ e }^{ -at }cos\omega t$$ | $$\frac { s+a }{ { (s+a) }^{ 2 }+{ \omega }^{ 2 } } $$ |
例題.次の式をラプラス変換してF(s)の式で表せ。
$$f(t)=5sin10t$$
まず、前についている係数は分けて考えましょう。
$$f(t)=5×sin10t $$
この式のsin10tの部分だけをラプラス変換する。
$$F(s)=5×\frac { 10 }{ { s }^{ 2 }+100 } $$
$$F(s)=\frac { 50 }{ { s }^{ 2 }+100 } $$
おしまい!
逆ラプラス変換
逆ラプラス変換…sの関数を時間tで表される関数に戻すこと。
ラプラス変換をしてsの関数で色んな計算をした結果、時間tに対してどのような変化をするのか知りたいなーってなってsの世界にあるものをtの世界に戻すイメージで使います。
F(s)で表される関数をf(t)に逆ラプラス変換する際には、以下の公式を使います。
$$f(t)=\frac { 1 }{ 2πj } \int _{ c-j∞ }^{ c+j∞ }{ F(s){ e }^{ st }ds } $$
「ぎゃああああ!」という声が聞こえてきそうです。
が、この式も計算が複雑なので一切使いません。(というか僕も使えません笑)
なので、先ほどのラプラス変換表を使って逆ラプラス変換をします。
例題.次の式を逆ラプラス変換してf(t)の式で表せ。
①$$F(s)=\frac { 5 }{ s } $$
これは、先ほどと同じくまずは係数を外に出して考えましょう。
$$F(s)=5×\frac { 1 }{ s } $$
\(\frac { 1 }{ s }\)の逆ラプラス変換は単位ステップ関数ですが、基本的にこれを1とおきます。なので
$$f(t)=5 $$
②$$F(s)=-\frac { 3 }{ s-5 } $$
これも(1)と同様に
$$F(s)=-3×\frac { 1 }{ s-5 } $$
これを逆ラプラス変換して
$$f(t)=-3×{ e }^{ 5t } $$
$$f(t)=-3{ e }^{ 5t } $$
【部分分数展開】
逆ラプラス変換をする際、次に示す①や②や③式のような形だと変換することができません。
なので、分数式を複数の簡単な分数式の和の形に部分分数展開する必要があります。
部分分数展開にはパターンがいくつかあるのでそれぞれ理解していきましょう。
ついでに逆ラプラス変換の練習もここでやってしまいましょう。
①分母を因数分解したときに、\({s}^{2}\)や\({s}^{3}\)がない場合
$$F(s)=\frac { 3s-23 }{ { s }^{ 2 }+s-12 } $$
まずは、分母を因数分解します。
$$F(s)=\frac { 3s-23 }{ (s+4)(s-3) }…① $$
これを次のような分母の因数を分けて、AとBを用いた形にします。
$$F(s)=\frac { A }{ (s+4) } +\frac { B }{ (s-3) }…③$$
$$F(s)=\frac { A(s-3)+B(s+4) }{ (s+4)(s-3) } $$
$$F(s)=\frac { s(A+B)-3A+4B }{ (s+4)(s-3) } …②$$
①式と②式を見比べると
$$\begin{cases} A+B=3 \\ -3A+4B=-23 \end{cases}$$
となり、この連立方程式を解くことで
$$\begin{cases} A=5 \\ B=-2 \end{cases}$$
となり、これを③式に代入します。
$$F(s)=\frac { 5 }{ (s+4) } -\frac { 2 }{ (s-3) }$$
これを逆ラプラス変換すると
$$f(t)=5{e}^{-4t}-2{e}^{3t}$$
となります。
②分母を因数分解したときに、\({s}^{2}\)や\({s}^{3}\)がある場合
例題2.$$F(s)=\frac { 8 }{ { s }^{ 2 }(2s+4) } …①$$
いきなりですが、ここからが最重要ポイント。\({s}^{2}\)や\({s}^{3}\)がある場合で、部分分数展開する時はsの次数を下げた項も作ってあげる必要があります。
こんな感じになります。\(\frac { B }{ s }\)のところが要注意ですね。これ以降は例題1と同じ解き方で解けます。
$$F(s)=\frac { A(2s+4)+Bs(2s+4)+C{ s }^{ 2 } }{ { s }^{ 2 }(2s+4) } $$
$$F(s)=\frac { { s }^{ 2 }(2B+C)+s(2A+4B)+4A }{ { s }^{ 2 }(2s+4) } …②$$
①式と②式を見比べると
$$\begin{cases} 4A=8 \\ 2A+4B=0 \\ 2B+C=0 \end{cases}$$
となり、この連立方程式を解くことで
$$\begin{cases} A=2 \\ B=-1 \\ C=2 \end{cases}$$
となり、これを③式に代入します。
$$F(s)=\frac { 2 }{ { s }^{ 2 } } -\frac { 1 }{ s } +\frac { 2 }{ 2s+4 } $$
$$F(s)=\frac { 2 }{ { s }^{ 2 } } -\frac { 1 }{ s } +\frac { 1 }{ s+2 } $$
これを逆ラプラス変換すると
$$f(t)=2t-1+{ e }^{ -2t }$$
となります。
③分母を因数分解したときに虚数が出現する場合
例題3. $$F(s)=\frac { 20 }{ { s }({ s }^{ 2 }+4s+20) } …①$$
これを解の公式を用いて因数分解すると
となりますが、このiという虚数が出てくるとこの後の計算が恐ろしく複雑になります。なので、元の式(①式)に戻って、()内のsの係数である4を2で割った2を使って
$$F(s)=\frac { 20 }{ { s }\{{ (s+2) }^{ 2 }+16\} } $$
こういう形にしてください。この操作がポイントになります。次に、分母の因数を分けて、AとBを用いた形にします。
$$F(s)=\frac { A }{ { s } } +\frac { B }{ { (s+2) }^{ 2 }+16 } …③$$
$$F(s)=\frac { A\{ { (s+2) }^{ 2 }+16\} +Bs }{ { s(s+2) }^{ 2 }+16 } $$
$$F(s)=\frac { A\{ { s }^{ 2 }+4s+20\} +Bs }{ { s(s+2) }^{ 2 }+16 } $$
$$F(s)=\frac { { s }^{ 2 }A+s(4A+B)+20A }{ { s(s+2) }^{ 2 }+16 } …②$$
①式と②式を見比べると
$$\begin{cases} 20A=20 \\ 4A+B=0 \\ A=0 \end{cases}$$
となるのですが、Aの値がおかしくなります。この方法は間違いです。
正しくは①式と②式を見比べて
$${ s }^{ 2 }A+s(4A+B)+20A=20$$
このようにsで括るのがポイントになります。
$$\begin{cases} 20A=20 \\ sA+4A+B=0 \end{cases}$$
となり、この連立方程式を解くことで
$$\begin{cases} A=1 \\ B=-s-4 \end{cases}$$
となり、これを③式に代入します。
$$F(s)=\frac { 1 }{ { s } } -\frac { s+4 }{ { (s+2) }^{ 2 }+16 } $$
ここからは逆ラプラス変換をする為の形にするのですが、慣れていないと難しいかも。
$$F(s)=\frac { 1 }{ { s } } -\frac { s+2 }{ { (s+2) }^{ 2 }+16 } -\frac { 2 }{ { (s+2) }^{ 2 }+16 } $$
$$F(s)=\frac { 1 }{ { s } } -\frac { s+2 }{ { (s+2) }^{ 2 }+{ 4 }^{ 2 } } -\frac { 1 }{ 2 } \frac { 4 }{ { (s+2) }^{ 2 }+{ 4 }^{ 2 } } $$
これを逆ラプラス変換すると
$$f(t)=1-{ e }^{ -2t }cos4t-\frac { 1 }{ 2 } { e }^{ -2t }sin4t$$
かなり高難易度な計算だと思いますが、電験2種ではこの3パターンさえ抑えておけば逆ラプラス変換で困ることは無いかと思います。
今解いた解き方以外の解き方として、ヘビサイドの展開定理というものがあり、これを使うと素早く部分分数展開ができますが、まずは今学んだこのパターンをマスターした方がいいかと思います。というかこれをマスターすればどんなパターンにも対応できるので・・・。
興味があれば後で調べてみてください!
そのうち、記事にまとめると思います。