コイルと磁界の強さ
磁界の発生
磁界は永久磁石によって生み出されますが、電流が流れることによっても生み出されます。
いくつかのパターンがありますのでそれぞれを紹介していきます。
直線の導体に電流を流した場合
直線の導体に電流を流すと、その導体の周囲に磁界が発生します。
その時の磁界の向きは下図のように右ねじの法則で表され、親指を電流の向きとしたとき4本指の巻く向きを磁界の向きとして定めることができる。
下図のようにI[A]の電流を流したとき、導体から半径r[m]離れた部分での磁界の強さH[A/m]は
で表すことができます。
コイルに電流を流した場合
コイルに電流を流すと、その内部に磁界が発生します。
その時の磁界の向きは先ほどとは少し違う右ねじの法則で表されます。4本指の巻く向きを電流の向きとしたとき親指を磁界の向きとして定めることができる。
下図のようにI[A]の電流を巻き数N[回]半径r[m]のコイルに流したとき、コイルの中心での磁界の強さH[A/m]は
で表すことができます。
気を付けておきたいのは、下図のように一見コイルに見えない場合でも青線の部分が0.25回巻のコイルになっていてO点に磁界の影響を及ぼすということです。H21年の過去問でこのパターンの問題が出題されているので確認しておくとよいでしょう。
環状ソレノイドコイルに電流を流した場合
環状ソレノイドコイルも普通のコイルと同じように電流を流すことでコイル内部に磁界が発生します。
で表すことができます。
平行導体を使った問題
磁界の強さを求めるだけの問題は、先ほどの3つの公式だけで対応できますが、磁界の強さを求めた上で別の何かを求めるような複雑な問題もあります。そのうちの一つを紹介しておきます。
下図に示すようにA導体に電流I1[A]をB導体に電流I2[A]を流したとき、両導体にはたらく互いに引き合う力の強さF1[N]・F2[N]を求めます。
まず、この力(例えばF2)がはたらく理由は、下図のように導体Aに電流が流れることによって発生した磁界が導体Bにはたらき、そこに電流I2が流れることにより、電磁力が発生するからです。
電磁力の公式は
$$F[N]=BIlsinθ$$
でした。なので磁束密度B[T]を求めていきます。ちなみに磁束密度B[T]の公式は
$$B[T]=μH$$
でした。なので、始めに磁界の強さから求めていきます。
$${ H }_{ 1 }=\frac { { I }_{ 1 } }{ 2πr } $$
この点における磁束密度B1は
$${ B }_{ 1 }={ μ }_{ 0 }{ μ }_{ s }\frac { { I }_{ 1 } }{ 2πr } $$
よって、導体Bにはたらく力F2[N]は
$${ F }_{ 2 }={ μ }_{ 0 }{ μ }_{ s }\frac { { I }_{ 1 }{ I }_{ 2 } }{ 2πr } l$$
という風になります。
同様に
$${ F }_{ 1 }={ μ }_{ 0 }{ μ }_{ s }\frac { { I }_{ 1 }{ I }_{ 2 } }{ 2πr } l$$
となり、両導体に同じ大きさの力がはたらくことも分かります。
他にも複雑な問題はありますが、この単元では基本となる3パターンの磁界の強さを求める方法をしっかりと覚えるとよいかと思います。複雑な問題に対する応用力は後からいくらでも養うことができますので。