水力発電・揚水発電
水力発電
上図において発電機出力\({P}_{G}\)[kW]は
$${ P }_{ G }=9.8Q({ H }_{ 0 }-{ h }_{ G }){ \eta }_{ T }{ \eta }_{ G }$$
$${ P }_{ G }=9.8QH{ \eta }_{ T }{ \eta }_{ G }$$
で表すことが出来ます。出力に補助単位の[k]がつくので気を付けましょう。
ちなみに、水車出力\({P}_{T}\)[kW]は
$${ P }_{ T }=9.8Q({ H }_{ 0 }-{ h }_{ G }){ \eta }_{ T }$$
$${ P }_{ T }=9.8QH{ \eta }_{ T }$$
で表されます。こっちは、比速度の計算で使用しますので発電機出力と混同しないように気を付けてください。
すなわち発電機出力と水車出力の関係は
$${ P }_{ G }={ P }_{ T }{ \eta }_{ G }$$
となります。
また、流量\(Q[{m}^{3}/s]\)は河川の流域面積を\(S[{km}^{2}]\),年間降水量をd[mm],流出係数をkとすると
$$Q=\frac { k×S×{ 10 }^{ 6 }×d×{ 10 }^{ -3 } }{ 365×24×3600 } $$
$$Q=\frac { kSd }{ 365×24×3600 } ×{ 10 }^{ 3 }$$
となります。
ちなみに、流出係数は年間降水量に対する年間流出水量を表しています。例えば、流出係数が1なら“降った雨が全て水車に流れていく”ということですね。
揚水発電
上図のような揚水発電所で揚水入力\({P}_{M}\)[kW]は
$${ P }_{ M }=\frac { 9.8{ Q }^{ \prime }({ H }_{ 0 }+{ h }_{ M }) }{ { \eta }_{ M }{ \eta }_{ P } } $$
$${ P }_{ M }=\frac { 9.8{ Q }^{ \prime }{ H }^{ \prime } }{ { \eta }_{ M }{ \eta }_{ P } } $$
で表すことが出来ます。水力発電と違って損失水頭を総落差に足さないといけないので注意してください。あと、二つの効率も分母に来ていますのでこれも注意しましょう。
以上の事より、よって、揚水発電所の総合効率η[%]は、発電時の流量Qと揚水時の流量Q’が同じとして、Q=Q’のとき、
となります。
比速度
水車の比速度・・・実物と相似関係にある水車を仮定し、1[m]の落差で1[kW]の出力を発生させるのに必要となる一分間あたりの回転数のことです。
有効落差を\(H[m]\)、水車の定格回転速度を\({n}_{n}[{min}^{-1}]\)、ランナorノズル1個あたりの水車出力を\({P}_{T}[kW]\)としたとき、比速度\({n}_{s}\)[m・kW]は
で表されます。
※\({P}_{T}[kW]\)は発電機出力ではなく水車出力であることに注意!
比速度は大きすぎると、キャビテーションの発生や水車効率の低下を引き起こすため、水車の種類ごとに下の表のような比速度の限界値が設けられています。
水車の種類 | 比速度の限界値 |
ペルトン水車 | \({ n }_{ s }≦ \frac { 4300 }{ H+195 } +13\) |
フランシス水車 | \({ n }_{ s }≦ \frac { 23000 }{ H+30 } +40\) |
斜流水車 | \({ n }_{ s }≦ \frac { 20000 }{ H+20 } +40\) |
プロペラ水車 | \({ n }_{ s }≦ \frac { 21000 }{ H+17 } +35\) |
電験2種の過去問ではこの式を覚えていないと解けない問題があり、余裕がある方は覚えておいた方がいいかと思います。
また、参考書によって比速度の限界の式が違っていたりしますが、どの式でも近い値が出てくるので、どの式で覚えても大丈夫です。
比速度の限界を求めた後は、定格回転速度の限界が分かり、そこから定格回転速度と極数が定まります。
練習問題
【例題】
有効落差200[m],使用水量20\([{m}^{3}/s]\)のフランシス水車1台を設置する場合の、①発電機出力[kW]、②水車の定格回転速度\([{min}^{-1}]\)を求めよ。ただし、水車の効率は92[%]、発電機の効率は98[%]、周波数は60[Hz]とする。
【解き方】
①発電機出力について
発電機出力を\({P}_{G}[kW]\)、発電運転時の流量を\({Q}_{G}[{m}^{3}/s]\)、有効落差を\(H[m]\),水車効率・発電機効率をそれぞれ
\({\eta }_{T}\)[%]、\({\eta }_{G}\)[%]とすると、
$${ P }_{ G }=9.8{ Q }_{ G }H×\frac { { \eta }_{ T } }{ 100 } ×\frac { { \eta }_{ G } }{ 100 } $$
$${ P }_{ G }=9.8×20×200×\frac { 92 }{ 100 } ×\frac { 98 }{ 100 } $$
$${ P }_{ G }=35342.7\cdots $$
$${ P }_{ G }≒ 35300[kW]$$
という感じで発電機出力が求められます。
②水車の定格回転速度について
定格回転速度を求めるために、まずは比速度の限界\({ n }_{ s }\)[m・kW]を求める必要があります。フランシス水車の比速度の限界は
$${ n }_{ s }= \frac { 23000 }{ H+30 } +40$$
で表されるので、
$${ n }_{ s }=\frac { 23000 }{ 200+30 } +40$$
$${ n }_{ s }=140$$
定格回転速度を\({n}_{n}\)[m/s]、水車出力を\({P}_{T}\)[kW]とすると比速度は
$${ n }_{ s }={ n }_{ n }×\frac { { { P }_{ T } }^{ \frac { 1 }{ 2 } } }{ { H }^{ \frac { 5 }{ 4 } } }…① $$
と、求まりますが\({P}_{T}\)が分からないので水車出力について考えます。
$${ P }_{ T }=9.8{ Q }_{ G }H\frac { { \eta }_{ T } }{ 100 } $$
$${ P }_{ T }=9.8×20×200×\frac { 92 }{ 100 } $$
$${ P }_{ T }=36064[kW]…②$$
②を①に代入して
$$140={ n }_{ n }×\frac { 36064^{ \frac { 1 }{ 2 } } }{ { 200 }^{ \frac { 5 }{ 4 } } } $$
$${ n }_{ n }=554.47・・・[{ min }^{ -1 }]$$
となり、定格回転速度はこれより低くする必要があります。周波数を\(f[Hz]\)、極数をpとすると
$${ n }_{ n }=\frac { 120f }{ p } $$
で表されるので、
$$554.47=\frac { 120×60 }{ p } $$
$$p=12.98・・・$$
となり、pは偶数にする必要があるので、p=14となります。
※p=12とすると定格回転速度の限界を超えてしまう。
よって定格回転速度は
$${ n }_{ n }=\frac { 120×60 }{ 14 } $$
$${ n }_{ n }=514.28・・・$$
$${ n }_{ n }≒514[{ min }^{ -1 }]$$
という風に定格回転速度が求められます。