固有角周波数・減衰定数・定常偏差

2021年9月8日

SATの電験2種講座

固有角周波数と減衰定数

電験2種では制御系における固有角周波数と減衰定数を求める問題がよく出題されます。

固有角周波数 \({\omega}_{n}\)[rad/s]:大きいほど速応性が高くなる。

減衰定数 \({\zeta}\) [単位なし]:大きいほど振動を減衰させる能力が高く安定性が高くなる。

上記の通り、この二つを求めることで制御系の速応性や安定性を知ることが出来ます

※ζはゼータと読みます。また、減衰定数には以下のような性質があります。

  • ζ<1は不足制動と呼ばれ、応答が振動する
  • ζ=1は臨界制動と呼ばれ、応答が振動しない限界点
  • ζ>1は過制動と呼ばれ、応答が振動しない

下の図を見た方が話がはやいかもしれません。

電気書院 出版 日栄弘孝 『これだけ機械・制御-計算編-』53Pより引用

固有角周波数と減衰係数を求める問題はパターンがほぼ決まっていますので以下の手順で解きましょう。

point!

①問題文で問われている伝達関数を求める。

②伝達関数の分母の\({s}^{2}\) の項の係数が1になるように分数を調整する。

③「2次遅れ要素の標準形は・・・となるので」と宣言する!

④ ②で出来た式の分母と③の式で出来た分母を見比べて先に \({\omega}_{n}\)を求め、次に\({\zeta}\)を求める。

 

③の2次遅れ要素の標準形は固有角周波数を\({\omega}_{n}\)、減衰定数を\({\zeta}\)とすると、次の式で表される。

覚える!
$$\frac { { { ω }_{ n } }^{ 2 } }{ { s }^{ 2 }+2\zeta { ω }_{ n }s+{ { ω }_{ n } }^{ 2 } } $$

このようになります。

 

では、いつものように例題を解いてみましょう。

例題

図のようなフィードバック制御系について、R(s)からY(s)までの伝達関数G(s)を求め、その固有角周波数\({\omega}_{n}\)[rad/s]と減衰定数\({\zeta}\)を求めよ。

【解き方】

まずは伝達関数を求めましょう。

$$G(s)=\frac { Y(s) }{ R(s) } =\frac { \frac { 6 }{ s(s+5) } }{ 1+\frac { 6 }{ s(s+5) } } $$

$$G(s)=\frac { 6 }{ s(s+5)+6 } $$

$$G(s)=\frac { 6 }{ { s }^{ 2 }+5s+6 }…①$$

この後は、二次遅れ要素の標準形の宣言をします。

point!

二次遅れ要素の標準形は(固有角周波数を\({\omega}_{n}\)[rad/s]、減衰定数を\({\zeta}\)とすると)

$$\frac { { { ω }_{ n } }^{ 2 } }{ { s }^{ 2 }+2\zeta { ω }_{ n }s+{ { ω }_{ n } }^{ 2 } } …②$$

と表されるので

 

※今回は問題文で\({\omega}_{n}\)\({\zeta}\)の定義がされているので、()内の文章は必要ありません。定義されていない場合はここの記述が必要です。

①式と②式の分母を見比べると

$$\begin{cases} 2\zeta { ω }_{ n }s=5s \\ { { ω }_{ n } }^{ 2 }=6 \end{cases}$$

上記の二つの式が出て、これを計算すると

$$\begin{cases} { ω }_{ n }=\sqrt { 6 } ≒2.45 \\ ζ=\frac { 5 }{ 2\sqrt { 6 } } ≒1.02 \end{cases}$$

という風に固有角周波数と減衰定数が求まります。

 

point!
二次遅れ要素の標準形を覚える

 

定常偏差

定常偏差・・・制御系において、定常状態(ある程度時間が経過したt=∞)における目標値と制御量の差のこと。

これも基本的にパターンがほぼ決まっているので以下の手順に従って解きましょう。

 

point!

問題文で問われている伝達関数を求める。

②問題文で与えられている入力にあたる部分がtの関数である場合はラプラス変換してsの関数にする。

③ラプラスの最終値定理を用いて、定常偏差を求める。

 

ちょっと分かりにくいですね。

伝達関数をG(s)、入力をR(s)とすると、定常偏差eは次の式で求められます。

point!
$$e=\underset { s→0 }{ lim } \quad sR(s)G(s)$$

定常偏差は問題文によって、定常位置偏差・定常速度偏差・定常加速度偏差などちょっと名前が異なっていたりしますが、これは入力がどういった関数かによって名前が変わるだけでそこまで気にしなくてOKです。一応詳しく説明しておくと

入力が

  • ステップ入力[1/s]→定常位置偏差
  • ランプ入力[1/\({s}^{2}\)]→定常速度偏差
  • 定加速度入力[1/\({s}^{3}\)]→定常加速度偏差

ってだけです。

とりあえず、これも例題で学習していきましょう。

例題

図のようなフィードバック制御系について、R(s)からE(s)までの伝達関数G(s)を求め、R(s)にランプ関数r(t)=tを加えたときの定常速度偏差\({e}_{s}\)を求めよ。

 

【解き方】

まずは伝達関数を求めましょう。

$$G(s)=\frac { E(s) }{ R(s) } =\frac { 1 }{ 1+\frac { 6 }{ s(s+5) } } $$

$$G(s)=\frac { s(s+5) }{ s(s+5)+6 } $$

$$G(s)=\frac { { s }^{ 2 }+5s }{ { s }^{ 2 }+5s+6 }…① $$

ランプ関数r(t)=tを逆ラプラス変換して、

$$R(s)=\frac { 1 }{ { s }^{ 2 } }…②$$

①式と②式を用いてラプラスの最終値定理を使うと

$${ e }_{ s }=\underset { s→0 }{ lim } \quad s×\frac { 1 }{ { s }^{ 2 } } ×\frac { { s }^{ 2 }+5s }{ { s }^{ 2 }+5s+6 } $$

$${ e }_{ s }=\underset { s→0 }{ lim } \frac { { s }+5 }{ { s }^{ 2 }+5s+6 } $$

limの計算はもう見たままですがs=0にするだけです。

$${ e }_{ s }=\frac { 5 }{ 6 } $$

というわけで、こんな感じで定常速度偏差が求められます。

ラプラス最終値定理を使う時のsは結構忘れやすいので気を付けてください。

 

というわけで基本的には、伝達関数を求めるところから入って、そこに入力関数を掛けてsをかけてlimでs→0とするだけです。簡単でしょ?笑

 

覚えることは結構ありますが、過去問などで演習を積むとすぐに慣れるかと思います。

「ラプラスの最終値定理を使用して」「2次遅れ要素の標準形は・・・」などの宣言も大事になってくるので練習時はこの宣言もきっちり書く癖をつけるように心がけるといいかと思います。

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