変圧器
変圧器の等価回路
変圧器はコイルの巻数比によって電圧を昇圧したり降圧したりできるという特徴があります。
変圧器は電気回路に置き換えると、下図のように表されます。
誘導機の回路とほぼ同じような形をしているので、覚えやすいかとは思います。また、この回路図のまま計算するのは非常に大変なので、この回路の二次側を一次側に換算した下図のような簡易L型等価回路がよく出題されます。
これこそ誘導機の回路とほんとそっくりさんですよね笑
励磁部が左の方に来ていますが、計算にほとんど影響しないので問題ありません。また、二次側の負荷や抵抗が\({a}^{2}\)倍されていることなどは電験3種レベルなので説明は割愛します。(一応赤字で分かりやすくはしてあります)
ちなみに、あまり出題されないのですが一次側を二次側に換算すると、下図のような簡易L型等価回路になります。
コンダクタンスやサセプタンスは逆数をとっているので、\({a}^{2}\)倍が逆数になっている点など注意しておくと良いでしょう。過去問では励磁部の2次側換算は見たことありませんが、一応こんな風に換算するので軽く覚えておきましょう。
これ以降の説明では二次側を一次側に換算したL型等価回路を用いて説明していきます。
変圧器の効率
上図で表されるように変圧器の損失は誘導機と同じく鉄損と銅損(一次銅損+二次銅損)の2種類があります。
$${ P }_{ i }={ 3g }_{ 0 }{ { V }_{ 1 } }^{ 2 }$$
↑単相変圧器の場合は3が必要ありません。
$${ P }_{ c }=3×{ { { I }_{ 1 } }^{ \prime } }^{ 2 }({ r }_{ 1 }+{ { r }_{ 2 } }^{ \prime })$$
↑こちらも同じく単相変圧器の場合は3が必要ありません。
また、変圧器の負荷率を\({\alpha}\)とすると、負荷電流が\({\alpha}\)に比例するので、\({I}^{2}{R}\)の考え方より、銅損は\({\alpha}^{2}\)に比例します。
ここで、変圧器の効率を\({\eta }\)[%]、負荷力率を\({cos\theta }\)、変圧器の定格容量を\({ P }_{n}\)[W]とすると
となります。また、上式を負荷率\({\alpha}\)で微分することで分かるのですが、
が成立しているとき変圧器は最大効率となります。【鉄損=銅損】ってことですね。
よって最大効率となる負荷率は、
となります。
これも変圧器の超定番の問題として出題されるので覚えておきましょう。
ちなみに負荷率を変化させたときの、変圧器効率と鉄損と銅損の関係をグラフに表すと次の図のようになります。
単巻変圧器
単巻変圧器・・・1つの巻線を一次側と二次側で共有する部分がある変圧器のこと。
電験3種時代に勉強したはずですが見覚えあるでしょうか?笑
電験2種では、過去に単相二巻線変圧器を単巻変圧器として使う時の結線図を書かせる問題が出題されています。(平成10年)
少しややこしいので軽く説明しておきます。
【例題】
上図に示すような端子U-V間の電圧400[V]、端子u-v間の電圧100[V]の単相二巻線変圧器がある。これを一次電圧500[V]、二次電圧100[V]の単巻変圧器として用いる場合の(1)単巻変圧器の結線図を描き、(2)一次側端子及び二次側端子を明示せよ。
【解き方】
(1)400Vと100Vから500Vを作る必要があるので、コイルを和動接続にする必要があります。和動接続は図の黒丸から同時に電流が流れ込むor流れ出すようにする必要がありますので、結線図は
①か②のどちらかになります。これが一つ目の答え。
(2)以降は①で話を進めていきます。まず①の図を少し分かりやすくしてみましょう。
ちょっとこの辺りが難しいかもしれませんが、Vからvまで回路を辿っていくと←と→の回路図が同じであることが分かるはず。
二つのコイルを和動接続することで500Vと100Vと400Vの3種類の電圧が取り出せるようになりましたね。ちなみに、差動接続なら400Vと300Vと100Vが取り出せそうですね。
今回は一次電圧500[V]、二次電圧100[V]とする必要があるので、もう少しスッキリさせると下図のようになります。
よって、一次側端子はV-v、二次側端子はv-Uもしくはv-uとなります。
※一般的には一次側に(U,V)、二次側に(u,v)を使うのですが、問題の作りこみが甘くてこういう答えになってしまいました。ごめんなさい(´・ω・`)
単巻変圧器の問題はこれに加えて、
- 分路巻線
- 直列巻線
- 自己容量
- 負荷容量
この4つをしっかり抑えていればほぼ問題無いかと思います。
一応、自己容量と負荷容量について説明しておきます。
自己容量と負荷容量については上図のようなイメージをもっておくといいでしょう。
自己容量Psは直列巻線の容量を表しているので、
このように求められます。
また、負荷容量は二次側の端子電圧と電流の積で表せるので、
という風になります。とってもシンプルですね。
スコット結線の変圧器
スコット結線は三相交流から二相交流に変換を行う変圧器の結線方式です。
二相交流は、とってもマイナーな交流電気ですが、交流式電気鉄道や・電気炉などで採用されています。
電験3種時代では言葉すら出てこなかった結線方式で苦手としている方は多いと思いますが、案外シンプルです。じっくり丁寧に勉強しましょう。
変圧器のスコット結線では、上図のように、T座変圧器と主座変圧器の2つがあります。
T座変圧器はOからS間が全巻数の\(\frac { \sqrt { 3 } }{ 2 } \)=0.866の点にタップを設けてU相を接続します。
主座変圧器は一次巻線の中点にタップを設けてT座変圧器のO点と接続しています。
まずは、一次側の対称三相交流の線間電圧を下図(左)のように定義します。(ちなみに、相回転はUVWとします)
\({V}_{WV}\)を基準ベクトルとして、3つの線間電圧をベクトル図で表すと上図(右)のようになります。ここまではまだ3種レベルの内容ですよね。
次にこのベクトル図を下図のように平行移動させて正三角形を作ります。
すると、U・V・W及びNのベクトル図上の位置関係が分かります。
このとき、T座変圧器の\({V}_{NU}\)は下図(左)のように表され、ベクトル図では下図(右)のように表されます。
このことより、
となります。T座変圧器の一次側のタップ地点が全巻数の\(\frac { \sqrt { 3 } }{ 2 } \)の点となっているのはこのためです。
よって一次側の線間電圧を\({V}_{1}\),二次側の線間電圧を\({V}_{2}\)として、T座変圧器の巻数比を\({a}_{t}\)、主座変圧器の巻数比を\({a}_{m}\)とすると、
$${ a }_{ t }=\frac { \sqrt { 3 } }{ 2 } ×\frac { { V }_{ 1 } }{ { V }_{ 2 } } $$
$${ a }_{ m }=\frac { { V }_{ 1 } }{ { V }_{ 2 } } $$
となります。結構複雑そうに見えますが、今のところT座変圧器の\(\frac { \sqrt { 3 } }{ 2 } \)さえ忘れなければOKでしょう!!(多分)
ちなみに、二次側の電流は一次側の電圧の位相差の関係と一致するので、下図のように
ということも言えます。
とりあえず、ここまで抑えておけば基本はOKです。
後は一次側の電流についての問題等がありますが、これは平成23年の問題を実際に解いてみて自力で学習するべき内容だと思いますので是非是非解いてみてください。
以上です!